朝練後、教室に向かいとろとろと歩いていると、もとさんもとさんもとさんもとさん!ときゃんきゃんと形容するしかない2種類の声に己の愛称を連呼されて、足を止めた。
「もとさんダイスキ!」
「利央なんかよりよっぽど好きッスもとさん!」
「ええっ…」
極めて短いコントのような告白のような宣言をして、ふたりは駆け寄ってきた勢いそのままに走り去る。ふたり仲良く授業の準備がまったくできていないらしく、同級生の名前を叫びながらばたばたと小さくなっていった。
走りながらも顔だけ振り向き続けたところには、俺たちお金なくてゴメンナサイ!どうぞ慎吾さんにたかってください!ということだそうで、傍らの山ノ井がのんびり笑う。
「もてもてですねえ」
「おかげさまでねえ」
誕生日ってこういうものだったかなあと仰ぐ空は青く青く丸くすてきで思わずいい天気だなと言葉がこぼれた。
「そりゃ裕史くんのお誕生日だから晴れてるんだよ」
「それ雨だったら恵みの雨だよって言ってたでしょ」
年相応に元気よく盛り上がりを見せてお祝いするのもいいけれども
「あ、誕生日だねおめでとう」ぐらいの平穏さも、好きだ。
「あ、誕生日だねおめでとう」ぐらいの平穏さも、好きだ。
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